男嫌いな女王様とクールな臣下
「違う。誤解だ」
「ええっと、結婚してくれなきゃビルを作る金はやらん?
俺の奥さんに向かって婿養子に入るから、社長を止めろだって?酷いね、これ。脅迫じゃないか?」
「違うって言ってるだろ?」
「じゃあ、何て言ったんだ?」
「べ、べつに契約上問題ないって、伝えただけだ。さっきお前が言ったのは、彼女の誤解だ」
「ほう、うちの嫁が先日あんたに言われたことは、全部記憶違いってこと?」
「ああ」
「わかった。ありがとう。ついでに一筆書いてね。これ」
前野は、あらかじめ印刷された書類を一枚差し出した。
書面には、堀田土地開発、B.C. Building Inc.と結んだ契約には、問題がないことを保証しますと書かれていた。
宇月がサインをすると、逃げるように店を出て行った。
朱音たちの後ろから、聞きなれた声がした。
「なんだよ、脅すだけだったじゃないか。本当に結婚する意味あったのか?」
榎田が後ろの席から立ち上がった。
「見事な手腕でした。ほら、録音も完璧です」
影山も席を移動してきた。
「二人ともそんなとこにいたの?」
「存分に楽しませてもらったよ」