男嫌いな女王様とクールな臣下
朱音を見送りに堀田土地開発の社長室まで行くと、重役の一人に声をかけられた。
「前野君、ちょっと」
重役の部屋の横にある会議室に呼ばれた。
ドアを開けると、社長以外の取締役がそろっていた。
「何です?」
全員の目が待ち構えてたみたいに、一斉に前野を見る。
「前野久俊君」
「はい」
「少々強引だが、合格としよう」
岩淵が言った。
「合格?何の試験ですか?」
まったく見当もつかない。
「朱音お嬢様の婿にふさわしいかどうかですよ」
影山がこっそり教えてくれた。
「婿になるのに、どうして試験をするんだ」
影山に答えてるけど、全員の耳に聞こえてる。
「朱音お嬢様の夫となられる方は、誰でもいいという訳ではありません」
影山が当然だという顔で言う。
「そうだろうけど、大げさな」
「決して大げさではありません。少々時間がかかりましたが、お嬢様が選んだ相手に決めることが出来て、本当にうれしく思います。これは、全員一致ですな」
「ようやく決まりましたな」
なぜか拍手が起こった。
「本当に長かった」
「本当に。長かったなあ」
「なんだ?あんたたちは」