男嫌いな女王様とクールな臣下
「朱音?あなたも仕事ばかりしてないで、早く、一緒にいて楽しい人を見つけてね」
いつものように、フワッとした、何とも言えないやわらかい表情で言う。
そういわれましても。
朱音は、ふうっとため息をつく。
春妃が二人いるなら、いいんだけど。
あんたみたいな男がこの地球上にいたらいいのに。
ふわっとして無理強いせず、いつの間にか人を動かしてる人。
そんな人がいればいいのに。
そしたら、ずっとそばにいたいと思うんだけど。
朱音は、自分か男に生まれてこれば、よかったのだと思う。
自分は、見てくれだけは直哉と変わらない。
学力、経営者としての感覚、要するに、中身は何一つとっても、直は自分の敵ではない。
能力的には敵ではないのに、ただ男っていうだけで同じ土俵には立てない。
直哉は、すくすくと育った人のいい青年だ。
人がいいだけに、人を見る目も素直なのだ。
だから、春妃の良さに気付くはずがなかった。
それなのに、見た目だけきれいな子を選ばずに、春妃のような子を選んだ。
直哉の祖父は、彼の将来を心配して春妃に気持ちが傾くように画策したと朱音は睨んでいる。