男嫌いな女王様とクールな臣下

「前野さんのことなの」
彼女は、誤解のないようにまずは、最小限の事だけ友人に伝える。

そうして相手に考える時間を与える。

「前野さんって?」
それ、男だよね?

場合によっては、ホテルのついでに来たって言われた方が嬉しいと思うけど。


でも、どこかで聞いたことのある名前。

すぐに思い出せないけど。

そういえば、前に一度会ったことがあるか。

春妃と同じ会社に勤めてる人だったと思う。

朱音は、平静をよそって、春妃の笑顔に答える。


「思い出した?お仕事のことで一度会ってると思けど?」
春妃は、屈託のない笑みで返してくる。

「そうだったっけ。それで?前野さんがどうしたの?」
朱音はサラダを食べ終えでナプキンで口を拭うと、スープを一口すすった。


「朱音、単刀直入で言う。彼を雇って欲しいの。それも今すぐに」

また、なにを言い出すんだ?

「雇う?それは、また、どうして?」

いきなり思ってもみないことを言われて、さすがの朱音も驚いた。

本当に、一緒にいて飽きないねえ、この人は。
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