男嫌いな女王様とクールな臣下
「そうもいかないの。このままだと、私が抜けたら、彼、きっと会社で一人になっちゃう」
「そうなるには、本人の言葉や行動も原因があるかもしれない。そういう人格が周りに敵を作る理由になるのよ」
「そうね。その通りだけど。前野さんは違うわ」
春妃は、一呼吸置いた。
「優秀な技術者はどこも不足してるわ。朱音んとこみたいな、一世代前の古臭い技術でしか対処できない情報システム部には、彼みたいな人がいた方がいいんだけど」
ああ……春妃、なにい出すのよ。
あんた、今、私にポストを与えてくれって頼んでるんでしょう?
相手けなしてどうするのよ、春妃。
「そりゃあね。人一人くらい雇うのは簡単だけど。
雇った後、その人がどうなるかってとこまでは、面倒見切れないよ」
「うん。その通りよ。だから、公平な目を持った人が周りに居ればそれでいいの。せっかくいい仕事をしても、正当に評価してあげればそれでいいの」
「ふ~ん」
「せっかくの能力が、無駄になってる。見ていてかわいそうなの。
会社は、前野さんの価値を分かってない。彼が部署を異動したって情報を聞きつければ、すぐにヘッドハンティングが目をつけて来るわ。それより前にあなたに知らせたくて」