男嫌いな女王様とクールな臣下
「いいよ、わかった。今日は。お前ひとりでお行き」
朱音は、老僕に手のひらを向けて拗ねて見せる。
「なりませんよ。お嬢様。先方は社長さんと是非にということでしたから」
影山は、眉1つ動かさずに言う。
「影山。嫌だ。今日は、帰りたい、嫌な予感しかしない」
「お風呂は諦めてください。宇月のおっちゃんが誰だかお忘れですか?」
「うちのメインバンクの会長。それがどうしたのよ」
「油をお風呂に垂らすより、優先度は高いのではありませんか?もし必要でしたら、ホテルにご希望の油などご用意いたします」
「油って何だよ、影山」
「さあ、私には浴槽に油を垂らす趣味はございませんので」
「わかった。それでいいよ。でも、今日は宇月のおっちゃんと最後まで付き合わないからね」
「かしこまりました。そうなさいませ、お嬢様」
いつものように、影山が頭を下げた。