男嫌いな女王様とクールな臣下
すっと、ふすまが開いて、膳が部屋に運ばれ並べられた。

全部で四つ用意されている。

膳の数が一つ多い。

朱音が口に出す前に、宇月のおっちゃんのだみ声が聞こえて来た。

誰かと話すみたいな、会話が聞こえて来た。

連れがいるのかな。

「いやあ、朱音ちゃん。待たせたな」
宇月のおっちゃんは、いつもの赤ら顔で入って来た。

朱音は自分が下座に座って、宇月の席をあけて待っていた。

「ここで待つのはいつもの事ですから、気にしませんよ」
朱音は、平然と答える。
大きな会社の社長だろうと、誰であろうといつも同じ態度だ。


「ほら、この通りだろう?この娘、わしのこと全然気にしとらん。度胸が据わっておる」

「会長?」男性の声だった。

おっちゃんの姿は見えているけど、話の相手になってる人物の姿までは見えない。

いったい、誰に話しかけてるのかと、声のする方を向いた。

おっちゃんは、一人ではなかった。
もう一人連れていた。
若い男性だった。

スーツを着て、メガネをかけている。
いかにも銀行員っていう感じの、部下を連れて来たのだろうと朱音は思った。
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