男嫌いな女王様とクールな臣下

年のころは、三十代半ばくらい。
でも、朱音より少し年上。

暗めのスーツを着て、朱音を視界にとらえると、隙のない様子で軽く会釈をした。

今時の銀行員でも見かけなくなった、真面目そうな男だった。

「まあ、座りなさい」
若い方は、会長の言う通り朱音の横に座らされた。

ん?

宇月は、床の間に近い一番の上座の席を若造に譲って、自分は影山と並んで座った。

『こういう時は、お客様が奥だ。そう、板の間がある方。だから、お前は出入り口の方、わしと向かい合って座れ』まさしく、同じ間取りの部屋で祖父さんに口うるさく言われた。

『バカもん、勝手に好きな席に座るやつがあるか』と。


こういうふうにするのは、宇月のおっちゃんに何か考えがあるからだ。

適当に相手を見繕って、朱音に合わせようとするのは、祖父が生きていたころには頻繁に会ったことだった。

当時は、何の自覚もなくおいしい料理と飲み物をいただいて帰るだけの楽しい事だったけど。

自分が社長になった今は、そういう単純な個人の問題で済ませられない。
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