男嫌いな女王様とクールな臣下
だみ声で、喜んでいる父親をよそに、息子が声をかけて来た。
「冗談なんじゃありませんよ。私は本気ですよ。朱音さん」
親父のだみ声とは似ても似つかない、冷静な声だった。
朱音は露骨にため息をついて、「どうぞ」と、となりのメガネ男にお酒をすすめた。
「ありがとう。近くで見ると実物は、本当にきれいですね。ますます、あなたが欲しくなりました」
うっすらと額に汗をかきながら、朱音は感情と関係なく、相手に微笑みを向けた。
「ご冗談を。そんなに優秀な方なら、お相手にいくらでもきれいな方がいらっしゃるでしょう?」
宇月雅也は、朱音の社交辞令に真面目に答える。
「確かに。美しい人はいますよ。でも、ずっと同じ家に住むんです。話もできなきゃ。ただ、きれいだけじゃつまんないでしょう?」
朱音もめげずに言う。
「あら、きれいで賢い方も大勢いるじゃありませんか?」
「そうですね。たくさんいますね」
もううう、本当に。
本気で、どこかに行ってくれ。
「ねえ、宇月さん。あなたのような人が、私みたいに髪の毛振り乱して、必死に働いてるような女なんか相手にしなくても、いくらでも他にいらっしゃるでしょう?」
頼むから。
私は、あんたが考えてるような女じゃないと思う。きっと。
朱音は、独り言を言う。
宇月雅也が、大根役者のように驚いて目を丸くして見せる。
「朱音さんは、自分を押さえるという美徳をお持ちのようですね。私は、あなたがますます気に入りました」
この男。父親に聞こえるように大きな声で言う。
「ほう、そうか。そうか。じゃあ、決めなさい。うちのママも朱音君のような美人なら申し分ないと言っておったぞ」
影山がいてもたってもいられなくなって、中腰になった。
「恐れながら、会長。うちの社長も息子さんとは初対面ですので」
おい、もう少し頑張れよ。
朱音が、聞こえないようにため息をつく。
影山がしどろもどろに声をかけるのを、朱音は冷ややかに見ながら思っている。
「冗談なんじゃありませんよ。私は本気ですよ。朱音さん」
親父のだみ声とは似ても似つかない、冷静な声だった。
朱音は露骨にため息をついて、「どうぞ」と、となりのメガネ男にお酒をすすめた。
「ありがとう。近くで見ると実物は、本当にきれいですね。ますます、あなたが欲しくなりました」
うっすらと額に汗をかきながら、朱音は感情と関係なく、相手に微笑みを向けた。
「ご冗談を。そんなに優秀な方なら、お相手にいくらでもきれいな方がいらっしゃるでしょう?」
宇月雅也は、朱音の社交辞令に真面目に答える。
「確かに。美しい人はいますよ。でも、ずっと同じ家に住むんです。話もできなきゃ。ただ、きれいだけじゃつまんないでしょう?」
朱音もめげずに言う。
「あら、きれいで賢い方も大勢いるじゃありませんか?」
「そうですね。たくさんいますね」
もううう、本当に。
本気で、どこかに行ってくれ。
「ねえ、宇月さん。あなたのような人が、私みたいに髪の毛振り乱して、必死に働いてるような女なんか相手にしなくても、いくらでも他にいらっしゃるでしょう?」
頼むから。
私は、あんたが考えてるような女じゃないと思う。きっと。
朱音は、独り言を言う。
宇月雅也が、大根役者のように驚いて目を丸くして見せる。
「朱音さんは、自分を押さえるという美徳をお持ちのようですね。私は、あなたがますます気に入りました」
この男。父親に聞こえるように大きな声で言う。
「ほう、そうか。そうか。じゃあ、決めなさい。うちのママも朱音君のような美人なら申し分ないと言っておったぞ」
影山がいてもたってもいられなくなって、中腰になった。
「恐れながら、会長。うちの社長も息子さんとは初対面ですので」
おい、もう少し頑張れよ。
朱音が、聞こえないようにため息をつく。
影山がしどろもどろに声をかけるのを、朱音は冷ややかに見ながら思っている。