男嫌いな女王様とクールな臣下


「髪振り乱してか……」
メガネ男が静かに言いう。

朱音は、微笑んで見せた。

「ええ。ですから私なんかより、もっと上品な方が」

宇月雅也は愛想よく朱音に笑って見せた。

「そうですねえ。それなら朱音さん、あなたの他に居ませんか?
大きな会社の持ち株をほとんど手にしていて、私より年下で、目の覚めるような美人。
しかも、頭脳も合格点だ。君のような人が、いったいこの日本中に何人いる?」

朱音は、表情を隠す様に。

思い悩むように口元に手を当ててから、静かに下を向いた。

勘弁してくれって。


嫌だって言ってんだろう?


あああ、めんどくせえ!!


何であったばかりのやつと、結婚しろだなんて、なにトチ狂ったこと言いやがるんだ?

嫌だって言ってんだろ!くそ眼鏡。



朱音は、考えてることなど、これっぽっちも顔に出さずに言う。

「もう、何、冗談言ってるんですか。
古くから続く、銀行一家の次男坊だって言うのに、とんでもない偏った女性の好みなんですねえ。
そんな偏ったご趣味じゃ、一生結婚できないんじゃないですか?」

あははと笑ってから、雅也が答える。

「私ですか?ご心配なく。それほど難しい趣味とは思ってませんよ」

「でも。そんなにすごい条件の女って、男の趣味も変わってると思いませんか?」

「そのことなら、知ってるよ。あんた、男が嫌いなんだろう?」

「ええっ?」

何ですと?


「噂は、本当なのか?」
< 38 / 156 >

この作品をシェア

pagetop