男嫌いな女王様とクールな臣下
「髪振り乱してか……」
メガネ男が静かに言いう。
朱音は、微笑んで見せた。
「ええ。ですから私なんかより、もっと上品な方が」
宇月雅也は愛想よく朱音に笑って見せた。
「そうですねえ。それなら朱音さん、あなたの他に居ませんか?
大きな会社の持ち株をほとんど手にしていて、私より年下で、目の覚めるような美人。
しかも、頭脳も合格点だ。君のような人が、いったいこの日本中に何人いる?」
朱音は、表情を隠す様に。
思い悩むように口元に手を当ててから、静かに下を向いた。
勘弁してくれって。
嫌だって言ってんだろう?
あああ、めんどくせえ!!
何であったばかりのやつと、結婚しろだなんて、なにトチ狂ったこと言いやがるんだ?
嫌だって言ってんだろ!くそ眼鏡。
朱音は、考えてることなど、これっぽっちも顔に出さずに言う。
「もう、何、冗談言ってるんですか。
古くから続く、銀行一家の次男坊だって言うのに、とんでもない偏った女性の好みなんですねえ。
そんな偏ったご趣味じゃ、一生結婚できないんじゃないですか?」
あははと笑ってから、雅也が答える。
「私ですか?ご心配なく。それほど難しい趣味とは思ってませんよ」
「でも。そんなにすごい条件の女って、男の趣味も変わってると思いませんか?」
「そのことなら、知ってるよ。あんた、男が嫌いなんだろう?」
「ええっ?」
何ですと?
「噂は、本当なのか?」