男嫌いな女王様とクールな臣下
「噂って。なんのことよ」
雅也がにじり寄って来た。
わずかなスキも見逃さない。
老獪さは、父親譲りだった。
「調べさせてもらった。君は、ほとんど浮いた噂がないと思ったけど、本当に男の影が見えないんだな」寄るな。
座ったまま、後退りするのは難しい。
畳のへりに引っかかって、止まってしまう。
朱音は、いつの間にかとらえられて、雅也に捕まってしまった。
「何するんですか?」
「男が嫌いでも、立場上、旦那は選ばなきゃいけないんだろう。だったら、事情を知ってる俺でいいだろう?君にとってもいい話だ」
なあにいってんだ?
「おっしゃってることの、意味が分かりません」
ダン!!
膳がひっくり返る音がして、雅也に上からのしかかられた。
朱音は両肩を押さえられて、畳に押し付けられている。
「離して」
朱音は雅也のことを睨みつける。
「君は、趣味で選んだ男に、会社が任せられるのか?」
彼は、睨まれてひるむどころか顔を近づけて来る。
「旦那なんて当てにしてないもの」