男嫌いな女王様とクールな臣下
朱音は体をよじって、相手の拘束を解こうとした。

膳が倒れただけでは、女将も気が付かないかもしれない。


顧問弁護士の榎田は、会社にいるかな。
早く来てよ。

遠くにいると、間ににあわないかもしれない。

「そんなに男が嫌いか?嫌いだって言って、本当は、知らないだけじゃないのか?」

不敵な笑みと共に、雅也の顔が近づいてきた。

「やめてください……」

「本当にきれいだな。その、泣きそうな顔、そそられる……俺が教えてやろうか?」

不意にキスされたことはあっても、無理やり奪われたことはなかった。

雅也は、自分の体重でガッチリと朱音の体を押さえると、朱音の唇をゆっくりと味わうようにキスをした。


雅也の目が朱音を捕える。

「今朝、新聞で見るまでそれほど興味を持たなかった。

本当にきれいだな。そんなに怖がるなって」

雅也は朱音の唇をキスで塞いだ。

「間近で見て気が付いた、君の唇ってふっくらとしてるね。

性格とは裏腹に、体は華奢で丸みを帯びてる。ここで奪っちまうか?」

雅也は、全部味わいながら、何度も唇を奪いに来る。


「いや……」

こんなふうにされるのは死んでも嫌だ。



『朱音ちゃん?榎田さんいらっしゃいましたよ』

遠くで女将の声がした。

「今日はこのくらいにしておくよ。君んとこの顧問弁護士も来たみたいだし」
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