男嫌いな女王様とクールな臣下
ふすまがガラッと開き、榎田が入ってきた。
「朱音?」榎田が、心配そうに声をかける。
「やあ」
宇月雅也は、ゆっくりと立ち上がると榎田に挨拶した。
「では、朱音さん。いずれまたお会いしましょう」
「誰だ、あんた」
榎田は、自分の立場も忘れて、怒り心頭になっていた。
「これは、堀田さんとこの顧問弁護士さんですね。私こういうものです。よろしくお願いします。今後は、よくお会いするかと存じます」
雅也は、名刺を一枚渡すと軽く頭を下げて出て行った。
榎田は、朱音の方に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「うん」
朱音を抱き起こすと、榎田は、乱れた朱音の着衣とか、細かいことに触れないようにして座らせた。
「家まで送るから」
「うん」
「散々だったな」
彼は、自分の上着を朱音にかけてやる。
「遅いよ」朱音が、榎田に言う。
「悪い。ちょっと気になってることがあって、人に会ってたから」