男嫌いな女王様とクールな臣下
朱音は、まっすぐに気持ちよく育っていた。

建築業界という世界は、決してきれいごとだけでは済まされない。

大きな会社の社長にもなると、闇の部分は全く知りませんという訳には行かない。

若くてきれいな女性社長という、クリーンなイメージでいられるのも、
こうして老人たちが、女社長のあずかり知らないところで、こっそり動いてきたからだ。

お祭りのおみこしのように、朱音社長は下にいる担ぎ手が押し合い圧し合い、
水面下で、部下たちが場所取りに懸命になってる姿をよく知らないで来たのだ。

というよりも、生まれた時から可愛がってきたお姫様に、
とてもそんな、汚れ仕事何かさせられないと、重役たちでフィルターにかけ、きれいな部分だけを見せて来た。


自分たちも若ければ、何ごともなくこのまま過ごせばよいのだが。

だか、一番若い影山だって、もう70歳になってしまってる。

今の状態で仕事が続けられるのも、あと数年だろう。

重役たちが、ごっそり抜けてしまえば顧問弁護士の榎田以外、頼るものがいなくなる。

恐ろしい事態になる。

本当の後継者を誰にするか。
早急に決めなければならない。

老人たちの悩みの種は、まさにそれだった。
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