男嫌いな女王様とクールな臣下
「朱音と俺をくっ付けようって話なら、ずっと前から言ってあるはずですが」
さすがに、榎田もうっとうしくなってきた。
「気が変わったかも知れんだろう」と常務。
「ご心配なく。その気はありません。朱音もそのつもりですから」
「でもなあ、大平銀行の次男坊が立候補して来てるんだが……」
坂田が、どっちの味方だかわからないみたいに言う。
「本人に決めさせれば、いいでしょう」素っ気ない榎田。
「ハイって言っても、本当にそれでいいのかと悩むし、
断ってしまうと、会社の将来はどうなるんだろうと心配で」まるで、友達の恋愛相談みたいにいう常務。
「だったら、社長と話し合いの場を設けるべきでしょう?」弁護士らしく正論の榎田。
「設けるべきでしょうってねえ。
面と向かったら、正直な気持ちなんて言えるわけがないでしょう。
生まれた時から知ってるんですよ。
自分の孫も同然なんですよ。強いことなんか言えますかねえ」
内田の意見に、全員がため息をついた。