男嫌いな女王様とクールな臣下
ピッという電子音が鳴った。

「体温計、貸して」

「あっ」

いきなり脇をあけたので、体温計がシャツの中に落ちてしまった。

シャツを調べて、どこに落ちたか手で触ってみる。

「どうした?体温計落としたの?」

「ええ」

「どこ?」
彼の手が、ブラウスの裾を引っ張り上げて、中にすっと手を入れて来た。

そして、小さな体温計を取り出した。

「あった。でもだめだ。エラーで測れてない。もう一度腕あげて」

「ええ」

平気なの?

彼は、朱音の体中べたべた触っている。

本当に?

男性が、肌に直接触れたのに。

今まで散々苦しませてくれたじゃないの。

好きな男の子が出来たと思っても、とても近づけなかった。

どうして?

彼の手なら、どこに触れられても平気なの?

なんで?

こんな事ってあるのだろうか?

朱音は、違和感なく普通の女の子のように男性を受け入れている自分に驚いた。

触れて欲しいと思うだけじゃなくて、もっと近づいて体を寄せ合って感じたいと思ってることに、もっと驚かされた。
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