男嫌いな女王様とクールな臣下
自分が、普通の男性を受け入れている。

彼に抱きしめられても、拒絶反応が起こらない。

そんな日が来るなんて。

「もういいかな。貸してごらん?」

前野さんが手を差し出す。


本当に、彼に抱きついても何ともないんだろうか?

「ちょっと待って……ああ……熱が上がってるよ。ベッドに連れて行こうか?」

「いいえ。いや。ここに居て」
この人なら、大丈夫かも知れない。

「ちょっと!」

万全ではないけど、試してみる価値はあると思う。

確かめずにはいられなかった。

これまで何度も、いいなと思う男性がいた。

でも、どの人も親しくなっていくと体の関係を求めて来る。

朱音は、どうしても相手を受け入れられなかった。


相手を好ましいという思いよりも、触れて欲しくないという感情を抑えることが出来なかった。

酷く苦しんでいたことが、嘘のように何ともない。

普通の女の子みたいに、彼にもたれてかかってみたい。

それとも、普通の女性のように、キスできるだろうか?

< 75 / 156 >

この作品をシェア

pagetop