男嫌いな女王様とクールな臣下
「素晴らしかったよ」

彼女の方から駆け寄って来て、遠慮がちに手を差し出してきた。

彼の方は、壇上にいて見守っているうちから、恋人らしくこの手で抱きしめて、思い切り褒めてあげたいと思っていた。

差し出された朱音の手をつかんで引き寄せると、そのままぎゅっと抱きしめた。

こんなに目立つことをすれば、注目を浴びるとは思った。

朱音の背中ごしに、目の前の男から痛いほどの視線を向けられた。

いったいなんだ?

彼女が男と親しくしているのが気に入らない?

どうして?

その男は、イラついてるのを隠そうとしないで、何か言いたそうなのに、何も言わずにじっと耐えていた。

多分、朱音が嫌がったら、すぐにでも間に割って入るつもりなんだろう。

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