男嫌いな女王様とクールな臣下
彼は、確か会社の顧問弁護士だ。
苛立ってる男に、朱音は無頓着に背中を向けている。
前野の誘いに嫌がってるわけじゃない。
彼女の方から応じているのは誰の目から見ても明らかだった。
イライラしてるのは、そのせいだろう。
とうとう、しびれを切らして彼が口を開いた。
「社長、すぐに社に戻って重役会議に行って下さい」
朱音の体がピクンと反応した。
朱音が、あら、そこにいたのって顔で振り返る。
「何かあったの?」前野は、白々しく聞いた。
「ええ、ちょっとしたトラブルがあって。対応を協議しなければならないの」
朱音が遠慮がちに言う。
「トラブルって?」
今度は、さっきよりわざとらしく言った。