お見合いですか?
腹黒なのか?
 彼女から電話があったのは、会社近くの定食屋で食べているときだった。
明らかに酔っている。呂律がまわっていない。
適当に相槌を打って、用件を聞き出そうとしたら、電話越しの相手が変わった。

 「すみません、愛実の友人の盛田です。突然申し訳ありません。愛実がかなり酔ってしまって、もし、お時間があるようでしたら、迎えに来ていただけませんか?」

はっきりとした口調と丁寧な言葉使いから、電話越しの彼女は、さほど酔ってはいないようだった。取り敢えず、場所を聞き出し、迎えに行くことにした。

 店内に入ると、目的のテーブルは、すぐに解った。さほど広くもない店内だが、愛しい彼女は、自分でも驚くほどすぐに目に留まる。
簡単に見分けがついてしまう。
近づいてきた店員に、断りをいれ、彼女の元へと歩いていく。

 声をかけようとしたところで、彼女がこっちに気付く。
「悠斗さんら~」と、ご機嫌で、ふにゃふにゃしている。
まだ、夜の8時過ぎなのに、何でこんなに出来上がってるんだ?
 
 「愛実、大丈夫か?飲みすぎ!」
ちょうど、彼女は通路側の席だったので、腕を取って立ち上がらせた。
「お金払う~」と言った彼女に対して、向かいの席に座っていた、男が、「今日は、愛実のお祝いだから、いいよ払わなくて。」と、優しい笑顔で言った。
こいつが、元彼かぁ。
「アリガトー礼央君、明日香もありがとね。」
にへらと彼女が笑って、バッグに財布をしまった。それを確認して、残り2人に軽く挨拶をし、愛実を連れて店をでた。
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