お見合いですか?
 会議は、概ね順調に進んだ。
進行役が、彼女だったからだろうか。
そう、仕事ができる女なのだ。

 初めて会った時もそうだった。
ハキハキとした態度で、一見ツンとした感じに見えるが、笑うと可愛いと思った。
常に落ち着いた対応だったし、年上だと思っていた。
だから、2才年下だと知った時は、ちょっと驚いた。

 初対面で、俺は失礼なことを言ってしまった。でも、次に会った時、笑って「また、来てくれたんですね。ありがとうございます。」と言ってくれたんだ。まぁ、多少ぎこちなかったけど。
 嫌な客であった俺に、何故わざわざ“覚えてますよ”っていうようなアピールをしてきたのか気になった。
それから、そこへ行く度、彼女を観察するようになった。
 そして、いつからだろう、彼女が時々切ない表情をする事と、いつも同じネックレスをしていることに気がついたのは。

 「それでは、これから本店の“森のパスタ”を試食して頂きます。最終的には、この味に近づけていただきたいと思います。」

 気付くと、もう会議も最終段階だった。
試食用のパスタが目の前に置かれていた。

 会議が、無事に終わった。
早速、彼女を探す。出来るだけ早く、逃げたい。
食器を片付けている彼女に声をかけ、手首を掴み、連れ出した。
大股で歩く俺に、小走りで彼女がついてくる。「ど、どうしたんですか?」
「捕まると色々厄介だから。」
もう少しで、正面玄関だというところで、向こうから人がやってきた。
「あっ、武中社長。お久しぶりです。」
おいおい、自ら罠にはまりに行くなよ~。
はぁ~、盛大に溜め息を吐き出した。

結局、一緒に飯を食うことになってしまった。
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