お見合いですか?
 昼休み前、内線で呼び出された。
一階の総務部へ行くと、待ち構えていたのは、真理さんだった。
 真理さんは、今日から悪阻のため、経理課に異動になっていた。

 「愛実ちゃん、お疲れ。そろそろ休憩でしょ?詳しく聞かせてよ。」

「はぁ、わかりました。」
今日から、工場勤務がなくなるので、まぁいいのだが。
 そう言えば、この指輪をくれた彼は、『ちゃんとつけて行ったか、確認するからな』と言っていた。
 そうか、もう、お兄さんに話したのか。

 真理さんとやってきたのは、何故か、'森のパスタ屋さん'だった。

 「ここの、トマトとバジルの冷製パスタが美味しいってきいたから。ごめんね。」
「いえ、大丈夫です。」
まぁ、流石に5年前と同じ店員さんはいないだろうし。

 注文をすると、早速質問責めにあった。
主に、どんなシチュエーションで渡されたのか、訊かれた。

 「ええ~、いがーい。悠斗もやるじゃん。愛されてるねー愛実ちゃん。」

 「まぁ、恥ずかしいけど、愛されてるなぁとは、思います。」
言った後で、やっぱり恥ずかしくて俯いた。

 すると、タイミング良く、注文したパスタが届いた。
今日は、夏野菜の彩り冷製パスタにした。

 「籍は、いつ頃いれるの?」
「私の誕生日か、その前の日に入れようって、悠斗さんが。」
「なる程ねぇ、まぁ、結婚記念日、忘れなくていいね。」
「ああ、そんな目論見があったんだ。」
「いや、単純にほら、愛実ちゃんの弟さんの話を、私がしたからじゃない?」
と、慌ててフォローされた。
「あ、それで、新居は決まったの?」
「はい、近くの賃貸マンションにする予定です。」
「そっか、良かったね。おめでとうございます。」
改めて、言われて、そう言えばおめでとうと言ってくれたのは、彼女が初めてだと気付いた。
 
 結局、ご馳走になってしまった。
婚約祝いといって、真理さんが昼食代を払ってくれた。
 
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