お見合いですか?
 「森高が困ってるじゃないですか。取り敢えず、今のところ順調ですから、心配しないでください。」
仕方無いといった風に、助けられた。
すみません、墓穴掘りました。どうぞ埋めてください。

 「そうか、まぁ、さっきも手を繋いでたし、仲良さそうで、安心した。」
えっ?見てたんですか?社長!
心の中で叫んでいた。

 「まぁ、そう言う事です。」
何、しれっと返してんのよ。
何なの?この親子。

少しボケッとしていたらしい。
「どうした?食わないのか?珍しい。」
「あっ、えっと、食べます。珍しいって、何時もと変わりません!」
「いや、何時ももっと旨そうに食ってるだろ。」
「ん?口に合わなかったかね?」
「いえ、とても美味しいです。社長。」
そ、そうよ。めったに食べられないんだから、食べないと。うん、そうしよう。
それから、食べることに集中した。

 「はー、おいしかったぁ。」
社長に挨拶をして、車に戻る途中で呟いたら、
聞こえていたらしく「そりゃ良かったな。」
と、フって笑いながら言われた。
「支社長ってこういう所よく来るんですか?」
「いや、今日は、特別じゃないか?」
「そうなんですね。良かったぁ。」
「なんで?」
「いや、何となく?高級品に慣れている人に、ご飯作ってたと思うと、ちょっと・・・手抜きと言うか、コスパを重視し過ぎたかな?と」
「君は、見れば解るんだろう。だから、感想は聞かないって。君からみて、不満そうだったか、俺は?」
「不満そうには、 見えなかったかなぁ。」
「じゃあ、そういう事だろ」
何、その笑顔!!
ちょっと、キュンとしてしまったではないか!

 彼は、さっさと車に乗ってしまった。

「あれ、もう交代ですか。」助手席に座ってから聞いた。
「ああ、行きは殆ど運転してもらったからな。」
やった!寝れる。「すみません。お願いします。」隣に向かって頭を下げた。
「ああ、寝るなよ。」
ゲッ、見透かされている。
「えええ、支社長、朝寝てましたよね!」
「森高、朝はともかく、今は就業時間内だ。」
残念だったな。そんな意地の悪い声が聞こえた気がした。
畜生、仕事中だと言われてしまえば、逆らえない。
渋々、頷いた。


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