お見合いですか?
 「首都高、私が運転するんですか?」
「勿論」
「えええ、ジャンクションとか、いっぱいあって、間違えそう。」
「大丈夫だ、ナビもあるし、俺もいる。とにかく、出発しようか。」
「うっ、は~い」

 神経がすり減ったってきっとこういう事を言うのね。
やっとの思いで、会社に着いた。
「お疲れ様」
「あっ、有希さん。疲れました~。」
「はいはい、コーヒーでも淹れる?」
「はーい。ありがとうございます。」

「すげーな、来て1ヶ月も経たないのに、有希のこと使ってるよ。 で、なんであんな疲れてるの?何かした?悠斗。」
「なんで俺が何かした事になるんだ。 まぁ、首都高の運転してもらっただけだ。」
「それで、あんなに疲れたってこと?」
「そういう事だ。」

 林さん達の会話を聞き流し、有希さんに淹れてもらったコーヒーを飲みながら、会議の内容をまとめていると、定時になった。
今日は、定時で帰ろう。
「お先に失礼します。」
「あれ、1人で帰るんすか?」井川君が聞いてくる。
「はい、今日は電車で帰ります。」
「大丈夫っすか?」
「大丈夫です。ばっちり調べましたから。しかも、乗り換えなしで行けそうなんです。」
「おお、さすが支社長、便利な所に住んでますね。」
「ですね。では、お先です。」
「お疲れさまです。」

 支社の人たち全員が、私と支社長が同棲している事を知っている。
しかも、お見合いをしたことも知られている。
初日にそれを聞いた時、それってどうなの?と思ったが、今は変に隠す必要もないので、楽かも、と思い始めている。
 
 帰りながら、彼にメッセージを送った。
夕飯は、何がいい?
返ってきた答えは、何でもいいよ。
はぁ、予想通り過ぎてつまらない。
それでも、今日は、彼の好きなものにしよう。

同棲とは、そう言うことだ。

・・・多分。
 
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