お見合いですか?
 「お帰りなさーい。ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・アハハハもうダメー」
笑い出してしまった私に、彼が言った。
「言ってみたかったんだな。そのセリフ」
「そうそう、せっかく同棲してるんだから、言ってみようかなーって。」
彼の鞄を受け取り、リビングに向かいながら言った。
「だから、インターホン鳴らせって書いてあったのか。」
「はい、鍵開けて入って来られたら、出来ないじゃないですか。」
応えながら、リビングのソファーの上に、彼の鞄を置いた。

 黒い、シンプルなソファーだ。しかも2人掛けだ。もう一つ1人掛けのソファーがある。
2人掛けの方に、鞄を置いたのだが、後ろからきた彼に、「座って」と言われてしまった。

 言われた通りに座ると、彼が隣に座った。
手を取られて、繋がれる、しかも恋人繋ぎにされた。
 手の甲を親指で撫でられる。やたらと。
何だか、落ち着かない、ムズムズする。
取り敢えず、座り直して下を向いた。自分の、繋がれていないもう片方の手をみつめた。

 「さっきの、、あれ、、愛実って言ったら、どうなる?」

「えっ?」

 思わず顔をあげて彼を見た。
思いの外、真面目な顔で聞かれていて、狼狽える。「いや、その・・・」言葉にならない。
 そもそも、後2ヶ月ちょっとは、そういう行為はしない約束で、、、だから、その選択肢は、元々存在しないというか、何というか。。。
 「えっと、その・・・何というか、考えてませんでした。」

「ふ~ん、そう。俺は、まず、愛実が良いんだけど。」
そう言いながら、頬をなでられた。
「いい?」
そう言って、今度は親指で唇を撫でてくる。

 顔が熱い。多分頬が赤くなっている。
恥ずかしいけど、この雰囲気に逆らえない。
小さく頷いた。

 そっと、唇が重なって、暫くして離された。
ふにゃって感じに力が抜けて、笑いかけると、
可愛い、と呟やかれ、またキスされた。
今度は、激しいやつ。がっつり後頭部を抱えられて、身動きが取れないほど抱きしめられている。
 たまに漏れる息が、艶っぽい感じになってくる、気持ちよくて、思わず手が彼の背中に廻った。
ヤバい、マジでヤバい。
どうしちゃったんだろう、武中さん。
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