お見合いですか?
教えてやろうか?
 車に乗り込むと、助手席に座った愛実が、「はぁ~、疲れた。」と呟いた。
「ああ、お疲れ。なんか、悪かったな。」
「悠斗さんが、悪いわけじゃないですから。」
と彼女は言ってくれる。
 少し、無理して笑う彼女が健気に思えて、
「少し休んでろ。」と言った。

「えっ、いいんですか?どうしたんですか急に。あまりにも久しぶりに実家に来たから、おかしくなっちゃったんですか?」
「そこまで、驚くことか?」

「あっ、そのスミマセン。お言葉に甘えて、休みます。」

速攻で、寝やがった。

まぁ、いいか。

 普段は、寝るなよと言っているが、ただ単に、彼女と話していたかっただけだ。
でも、今は話さないほうがいい、彼女にこれ以上無理はさせたくなかった。

 東京へ向かう車はすくなくて、快適だった。
一般道に入るタイミングで、彼女が起きた。

「結構寝ちゃいました。」そう言って、おきたが、まだ、眠そうな目をこすり、欠伸をしている。
「どこか寄りたいところあるか?」そう聞くと、少しぼんやりとしながら、「ん~っと、夕飯の材料、買いたいです。」
「そうか、じゃあスーパーに寄ってくか。」

 スーパーで買い物をする時、食費は彼女が払うという約束だから、大体別々に行動したりする。でも、今日は特に買いたい物もないので、何となく彼女と一緒に歩いた。

 最初は、彼女がカートを押していたが、カートを残して品物選びに入り込んでしまうので、仕方なく、今、俺がカートを押している。
「あっ、すみません。」と、言いながら戻ってきた彼女が、カゴのなかに野菜類をいれていく。
「何時も、こんな感じなのか?」
「えっ、こんな感じって?」
「バッグをカートにかけたまま、カートから離れるな。盗まれるぞ。」
「ああ、でも携帯はポケットにありますよ。」
と、どや顔で言うから、はぁ~と、ため息を吐き出してから、「警戒が足りない。」と言ってやった。
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