お見合いですか？
　「普通は、覚えて無いだろうね。5年も前の話だし。。」
彼は、フッと笑って言った。
何故だか、その目を見ていられなくて、資料の中身を眺めた。
　
　何かしでかしたのかもしれない。
5年前の私は、最悪だった。
副店長として働いていたにも関わらず、失恋直後で、その日その日をこなす事だけで、精一杯だった。
　気が緩むと、すぐ泣きそうになった。
たまに、涙目になってしまうのを、花粉症だから、とごまかしていた。かなりイタい。
周りにも、バレていたかも知れない。
そんな状態だったから、何かやらかしたのかもしれない。
　でも、林さんの前でやらかしたこと、あったっけ？

　結局、よく思い出せなかった。
彼の仕事が終わったので、退社した。

　お昼は、彼が奢ってくれるというので、会社近くの喫茶店にはいった。
自分で払うのは勿体ないけど、奢って貰えるなら、食べたいと思っていた。
1000円のサンドイッチを即決で頼んだ。

　「美味しいです。さすが1000円以上するだけあります。」
「そりゃあ良かったな。」
「はい、良かったです。というか、明日も午前中だけで終わりですか？」
「トラブルとかなければね。」
「そうですか、明日は、友達とランチの約束をしてるんですけど‥」
「言っただろ、別に君は出社する必要はない。行って来ればいい。」
「すみません。あっ、でも朝は一緒にこっちに来ていいですか？」
「それは構わないけど‥」
「じゃあ、そういうことで。」
そう言って笑うと、彼も笑ってくれた。
< 58 / 163 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop