お見合いですか？

　助手席に座り、シートベルトをすると、車が動き出した。
「何故、私にデザートの試食をさせたんでしょうか？」気になっていた事をきいた。
「デザート工場が欲しかったんだろ？今のうちから試食しておけば役にたつだろ。」
「まぁ、そうですけど・・・」
なんか、腑に落ちない。普段の彼なら前もって教えてくれる筈だ。
何故、何も聞かされずに、急に試すような事したの？
何か引っかかったけど、「昼飯どうする？」と言われて、その考えが途絶えた。

　「奢ってくれるなら何でもいいです。」と言ってやった。
ゴールデンウイークに奮発しちゃったから、
今月ピンチなのだ。武尊食品に来てから少し、給料下がったし。まぁ、役職付じゃ無くなったのはイタい。だもんこれくらい言っても許される筈だ。

　彼は、笑いながら、「じゃあ、蕎麦でいいか？」と言いながら、ハンドルをきった。
　
　うわー、またも高級感満載の店ですよ。
地元だけど、入った事なかったよ、あるのは知ってたけど。
　個室の座敷に通され、お品書きを見つめながら思った。
盛り蕎麦で二千円。
うわー、盛り蕎麦しか頼めない。

「盛り蕎麦で」と呟いて、辺りを見回した。
窓の向こうに日本庭園がみえる。
日の光が注がれていて、とても綺麗だ。
「それだけで足りる？」
「それが、最近太った？って有希さんに言われて、うー。ちょっとダイエット中なんです。」
「太ったって感じしないけど？」
彼はそう言ってから、注文をすませた。

　「今まで食べてた蕎麦はなんだったの。物凄く美味しいんですけど、香りが違う。全く違う。」少し、興奮気味に感想を言った。
「だろ、俺も初めて食ったときは、マジで驚いた。」と、なぜか得意気に応えられた。