お見合いですか?
 帰りは、私が運転することになった。
まぁ、行きに運転してもらったしね。
車に乗る前に、「ごちそうさまでした。」とお礼を言った。
「はいよ。」と言って、彼は車に乗り込んだ。

「支社長って、高級店よく知ってますよね。」
思ったことを言うと、「親父が知ってるだけだよ。」と素っ気なく返された。
「何でそんな高級店に連れてってくれたんですか?」
「なっなんとなく?俺も久ぶりに食いたかったし。愛実もさ、好きだろうなぁって」
急に、口数が多くなった。
なんか、怪しい。
「そうですか、何か後ろめたい事でもあるのかなぁと。」
「後ろめたいってわけじゃ・・」
何か珍しく弱気だ。
「じゃあ、なんですか?」
「わりい、今は話せない。」
「機密事項みたいな感じですか?」
「まぁ、そんな所かな。」
そう言われてしまうと、それ以上聞けない。
なんだか引っかかるものの、この話題はここで終わりになった。


 その翌週、ついに結果が届いた。
届いてしまった。
目の前の封筒を見つめて立ち尽くした。
マンションの郵便受けの前で、固まっていた。
後ろから声をかけられて、ビクッとなった。
「どうした?」
「あっ、これが・・・」封筒を彼に渡した。
「おっ、思ったより早かったな。」
「ええ、早すぎるくらいです・・」
小声で言ったつもりが、聞かれていたらしい。
「何が嫌なんだ?」エレベーターに乗ってからきかれた。
「すみません、まだ、心の準備が・・」
正直なところ、今更緊張してきたというか、なんというか。
部屋に入ってからも、なんだか落ち着かない。
取り敢えず、荷物を置いて、封筒を開けようとしたところで、取り上げられた。
「飯食ってからにしよう。」彼はそう言って、封筒を彼の自室に持って行ってしまった。

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