お見合いですか?
 「それなら藤堂が居るじゃないですか。森高でなくてもいいんじゃないですか?それに、娘さんがいるじゃないですか。」
確か、林の伯父さんには娘が居たはずだ。
康太と年の離れた妹を、思い出した。
「ああ、玲子か。玲子はもう婚約が決まりそうだからなぁ。こっちには戻ってこないだろう。はぁー、やっぱり娘っていうのは嫁にでてしまうんだなぁ。」
「えっ?そうだったんですか?相手は誰なんですか?」
「WAIマートの御曹司。残念だが、反対する理由がない。」
はー、そりゃそうだろう。
WAIマートは、県内に30店舗ほどあるスーパーだ。
勿論、うちのオリジナル商品を、数多く置かせてもらっている。
「藤堂じゃ、だめなんですか?」
一応、聞いてみる。
「社長は、藤堂さんでいいと言ってるんだが、会長は、藤堂さんだけじゃ無理だと思ってる。」
「はぁー、伯母さんと親父っていつも意見が合わねーんだよなぁ。」
「ははははっ、解ってるじゃないか、悠斗も。まぁ、そう言う事だ。俺は社長の味方するわけにいかないからさぁ、取り敢えず愛実ちゃんを試してみたらって言ってみた。」

「伯父さん、伯父さんには感謝してますが、今、伯父さんのせいで愛実に不信感を持たれてます。暫く大人しくしてもらえませんか。」

「はっははは、悠斗も言うようになったなぁ。
まだ、落とせないのか?」

 「信頼関係だけは、時間をかけないと築けないと、教えてくれたのは伯父さんですよ。今この話をしたら、逃げられます。」
そう言って、電話を切った。
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