副社長と愛され同居はじめます
ただ、それを伝えるか伝えないか。



「一つだけ、梨沙さんから気になること聞いた」

「何?」

「柊が、荒川のお祖父さんにお世話になったって話。まだ私には聞かせてくれないの?」



私が彼を好きになってから。
という約束だったけれど、ここまで来たらもう仕方ない、と彼は諦めたらしい。



「世話になったのは確かに荒川のじいさんだけど、俺が本当に感謝してるのは小春のご両親だ」

「え?」

「小春にも会ったことあるよ、小さすぎて覚えてないだろうけど。あの頃俺は八歳で小春はまだ三歳くらいだった」



後は、家に帰ってからゆっくり話そう。


抱き寄せた私の髪にキスをして、彼が言う。
大事にしてくれている、それが。


もしかすれば、恋慕ではなく情からくるものなのだとしたら。
全てが納得できてしまう。


こんな風に好きになってしまってから気付くなんて、この人は本当に酷い人だと、愛しくなった。


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