副社長と愛され同居はじめます
適当に、行き当たりばったりでついた嘘だけれど、実際より余程真実味があるなと思ってしまった。


やはり夢物語なのだ。
私が、成瀬さんと結婚するだなんて。


そう思えば、幾分吹っ切れる。


だけど俊次さんの方は、諦めがつかないようだった。



「ふざけんなよ、なら誘惑しろよ、得意だろそう言うの」

「は？」

「荒川の跡取り息子を誘惑した女の娘なんだしさ。お前も玉の輿乗れるじゃねえか」

「……お母さんを侮辱しないで！」

「侮辱じゃねえよたくましいっつってんだよ。成瀬が荒川やお前に肩入れしてんのは知ってんだよ、きっと上手くいくって！」


ずかずかと俊次さんが土足のまま上がり込んでくる。
近付く距離が、急に体格差を理解させて怒りで麻痺しかけていた警戒心が呼び起こされた。



「じゃなくても、お前さえいりゃ成瀬のやつは金出すよ、絶対。なあ？」

「いやっ！」



私を捕まえようとする、その手が恐ろしくて払いおとした。
ぎゅっと怒りと焦りに歪んだ男の顔に恐ろしくなって、私は彼を突き飛ばして外へ走り出た。





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