副社長と愛され同居はじめます
カンカンカン、と階段をかけおりる音がして俊次さんが逃げ出したことを知る。
「さて……小春」
今度は、私に向けてその怒りの声が向けられた。
びくっ、と身体が震えた。
怒ってる。
そりゃそうだ、何も相談もせず勝手に置き手紙一つ残して飛び出して、この様。
抱き締める腕が緩んだので、おそるおそる彼を見上げると。
ひい!
青筋がぴきぴきと痙攣でも起こしてそうな程に怒りの形相だった。
ごめんなさいごめんなさい!
二度と、勝手なことはしませんから!
そう謝ろうとしたのだが。
「お前、なんだこの手紙は!」
「あ……え?」
彼の手にはぎゅっと握り締められた便箋一枚。
私が書いたやつだ。
「お前ふざけんなよ!俺が、あんなはした金を返せだなんだ言う懐の狭い男だと思ってんのか!」
彼の怒りの沸点は、どうやら私が思うとことは違うところにあったらしい。