副社長と愛され同居はじめます
一度は婚約したものの、両親と伊月梨沙を説得し解消した。


どうせ結婚しなければいけないなら、彼女が欲しい。


荒川の血筋だと言えば、最終的には皆頷くだろう、そうでなければ結婚などするものか。
その方が、両親にとっても困るはずだ。


まるで子供が、今まで手に入らなかった玩具を欲しがるような感覚で、下準備を始めた。
のだが。


定期報告で、彼女がキャバクラで働き始めたと知った時、心底ムカついたし苛ついた。
彼女を迎え入れるために、両親と親戚たちを黙らせられるだけの実績を積んでから、と計画を立てていたのに、慌てて迎えに行かなければならなくなったのだから。



ベッドに身体を静め、幸せそうに眠る彼女の頬を指で擽る。
店で彼女と今一度再会を果たし、その時の怯える彼女の表情を思い出してつい笑みが零れた。


本当に、感情に豊かで表情が正直で、見ていて飽きない。


俺が思いもよらないことで怒り出し、機嫌を悪くして、良かれと思ったことで喜ばなかったり、散々振り回されたのは俺の方だ。


彼女は俺に、いろんな感情を与えてくれて
俺の知らないことを、たくさん教えてくれる。

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