副社長と愛され同居はじめます
弟の為だけではない。
私だって、幸せになりたい、もう金に苦労しない生活を手に入れたい。


そのためには、あの会社で少しでも上のエリートを捕まえて玉の輿に乗りたい。
若しくは、このバイトでそれなりの会社の社長や役員とかでもいい、そのつながりで有望株が芋づる式に掘り起こせればその中の誰か一人の目には止まるかもしれない。


同情でもなんでもいい、なんとかこの人の許しを得てクビだけは免れなければならないのだ。



「あ、あのっ!」



意を決して顔を上げれば、キラキラ眩しいご尊顔が目の前にありうっと言葉に詰まった。
眩しすぎて目がチカチカするのは気のせいかな、あ、後ろにミラーボールがあるからか。


がばっと額が膝に着くほどに深く頭を下げた。



「副業が禁止されていることは知ってます! ですが、どうしても事情があってお金が必要だったんです。弟の大学費用を出してやらなきゃいけなくて……」



正直に告白するしかない。
それでダメなら、バイトを一旦辞めることで今回だけは見逃してもらえないだろうか。


バイトか正社員かとなると、当然安定収入のナルセ商事を辞めるという選択はない。
それでもダメなら……。


ちら、と頭を過ったのは、この人を落として玉の輿に、とかかなりお花畑な案だが無理無理無理無理。
いくらなんでも雲の上のお人にもほどがある。


天上人でなくていいのだ、普通の金持ちと結婚したい。



「一時だけなんです、ずっとやるつもりはありません! ですからどうか……」



見逃してはもらえないでしょうか。
言い募っても反応がないので、恐る恐る顔を上げる。


ちょっとでも同情してくれたら、少しは優しい目線になっているだろうかと期待したが、彼の目は少しも変わらず無表情のままだった。

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