副社長と愛され同居はじめます
「あ……、あの! 成瀬さん?!」
「ああ、それもいいな。それとそれ、あとそれも」
ずらりと並んだ煌びやかなドレス。
応接室のような一室で、店員がざっと私の全身を見て見繕ったドレスから、更に成瀬さんが何着かピックアップする。
「成瀬さんてば!」
「なんだ。早く試着してこい」
連れて来られたのはどこぞの美容サロンで、こんな格好で入れないと怖気づく私の首根っこをひっ捕まえて連行された。
冗談でも比喩的表現でもない、本当に後ろ襟辺りを掴まれて引きずられたのだ、窒息するとこだった!
靴もドレスも、全てが、私のサイズで揃えられてあった。
つまり私一人の為に、このサロンに集められたのだ。
確かに、私の為にドレスを誂えてくれるような男性になら貞淑を誓うと思っていたけれど。
さすがにこれは、レベルが違う。
ゼロの数が違う。
「い、いくらなんでも、こんな! 店に出るためのドレスでこれは勿体ないです! 今度のお給料が入ったらドンキで自分のドレスを買おうと思ってて」
「…………鈍器?」
「ドンキホーテです! あのお店でこんな上等なドレス着てる人いませんよ!」
マナミさんは人気ナンバーワンだし、綺麗なラインのドレスをいくつも持ってるけど。
今私が着せられようとしているのは、次元が違う。
仕立てが違う、布地の質が違う。
それ程目が肥えているわけではないけれど、そんな私の目で見てもわかる。
「いいから早く。俺の隣を歩くのに貧相な格好をさせられるか」
ついさっきまでの格好を、全力で謝りたい気分だ。