副社長と愛され同居はじめます
父の弟の長男だという彼は、私より、いくらほど年上だっただろう?
とても親身になってくれて、初めて血の繋がりのある親戚筋が見つかって私はいつの間にか信頼しきっていた。


父の父、つまり祖父が地元では名士と言われ古い血筋であったこと、そして父が実は跡取り息子だったのだとその時に初めて知った。


俊次さんの父で私達の叔父は、何年か前に早くに亡くなっていることを話してくれた。
そして祖父が亡くなって、遺産相続の手続きの為私達の父を探していて父も亡くなっていることを知ったのだという。



「爺さんはまあ、往生した方だけどさ。息子二人がこんなに早く亡くなるなんて本当、不運な血筋だよな。だから俺も今、一人みたいなもんなんだよね。こうしてやっと出会えたんだからさ、いとこ同士助け合おうよ」



財産は、ど田舎の山林や農地など広大ではあるけれど地元の人間でなければイマイチ価値がないものだという。
売るに売れない物件ばかりで、地元との兼ね合いもあり売り払うことも出来ないそうで。



「大丈夫、小春ちゃん達にもちゃんと利益が渡せるように弁護士と話してるから。財産の管理はとりあえず任せてよ」



その言葉をまるまる信じて、私と弟は遺産相続を放棄した。
事実、田舎の山林など貰ってもどうすればいいのかわからないのが現状だったし、財産云々よりも、私は助け合える親戚が見つかったことが何より心強かったのだ。


ハンコを押した途端、ぷつっと連絡が途切れることなんて思いつきもしないほど、私は人には良心というものがあるのだと信じて疑わなかった。


能天気な家庭で育ったお陰だ。




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