副社長と愛され同居はじめます
「酷いと思いませんか!! あんまりですこんなの!!」
副社長室を出た私は、庶務課に戻って来ていた。
戻ったところでここに私の居場所がないことは重々わかっているけれど。
先輩方には随分とこき使われはしたがそれなりに可愛がってもらっていた(はずだと思っている)し、他に行く場所など見つからなかった。
「まあねえ。私らもびっくりしたわよぉ。アンタがいきなり秘書課とか。ウケる」
「ウケないでくださいよ、務まるはずないじゃないですかいきなり!!」
「で、愛人なの?」
「違います!」
机に突っ伏していた頭を勢いよく上げて、断固否定した。
「まあ、アンタと副社長がどういう関係なのか、聞かないでいてあげるけどぉ」
インスタントのコーヒーをいれて手渡してくれる。
これは、私の仕事だった。
別に、仕事に対して誇りだとか、それほど大仰な気持ちを抱いていたわけではないけれど、私なりに一生懸命働いていたつもりだ。
それを全部、成瀬さんに否定されたような気がした。
感傷と怒りで胸が重苦しく、深く息を吐き出す。
そんな私に追い打ちをかけるように、先輩が言った。
「私らはさあ。そこまでの玉の輿狙ってないし、構わないけどぉ。羨ましいってより寧ろ可哀想っていうか? でも他の女性社員には気をつけなよ。特に秘書課とか。副社長なんて、うちの最優良株なんだからさ」