副社長と愛され同居はじめます
先輩方は、何かと仕事をサボリがちで社会人としてどうなのって、一緒に仕事をしていた時はそう思っていたけれど。
ちょっと、やっぱりさすが先輩だなと思った。
今回ばかりは社会人としての心構えを忘れかけていたのは私の方だ。
庶務課を出て、副社長室にはけったくそ悪いので戻らなかった。
それに今戻っても、私はせいぜいお茶くみぐらいしか出来ることがない。
忙しい成瀬さんに、その都度逐一「何をすればいいですか」なんて聞いていては邪魔にしかならないのだ。
……っつか成瀬さんの責任なんだから、それくらい困らせてやってもいいかとちらりとは思ったけれど、そこは仕事だ。
最低限迷惑をかけないだけのことを、自分で出来る範囲でまず考えなければいけない。
そして私は、秘書室長を訪ねて扉をノックした。
今朝、辞令が下りてすぐにも来た部屋である。
「どうぞ」
「失礼します」
銀縁眼鏡の奥で、冷ややかな目が光る。
秘書室長は男の人で、とても厳しそうな人だった。