副社長と愛され同居はじめます
「ああ……なんだ」



成瀬さんの顔が、少しだけ緩んだ。



「薔薇が気に入らなくてちぎってるのかと思った」

「そんなことするわけないでしょ、薔薇に罪はないのに」

「そうか」



うん、と頷く。
彼が徐に顔を近づけて、ちゅ、と軽く唇を吸った。


そしてまた、私の表情を窺う。



「ねえ、喧嘩する度にこんなことするつもりなの?」

「同じ内容だと飽きるだろうからまた考える」

「いやそうじゃなくて……私の機嫌取るためにここまでしなくても」



視線をさっと部屋中に巡らせて、それからまた成瀬さんを見た。
怒ってたはずだし今もムカついてると言えばムカついてるけど、もう笑顔しか出てこなかった。



「小春の機嫌は取りたいけど」

「うん?」

「謝らない。小春は秘書課だ、庶務には戻さない」



横暴だ。
だけどもう、「はい」としか言えないだろう。

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