副社長と愛され同居はじめます
驚いて、目を見開いて彼を凝視した。
ソファに座る私の前に跪く彼は、真顔だけれどとても優しい目をしているように見えた。



「知ってたんですか」

「成績も優秀だったと聞いてる。すぐには活かせなくてもいい、失敗すればサポートしてやる。勉強しながらで構わないから、少しずつでもビジネス英語を習得しろ」


ふる、と唇が震えて噛み締めた。


いつか、英語に携わるような仕事がしたいと思って、大学受験で英文科を目指した。


やむなく失くしてしまった夢を、取り戻していけるようなそんな予感に涙が溢れそうだった。
何よそれを知って、私の手に再びチャンスを掴ませてくれようとしている彼に、きゅっと胸が苦しくなるほどの想いが募る。



「小春?」


思わず腰が上がる、その膝からハラハラと薔薇の花びらが落ちる。
気付くと私は、彼の首筋に縋り付いていた。


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