副社長と愛され同居はじめます


「ありがとうございます」



きゅう、と抱き着いて首筋に顔を埋める。


すると暫くして、背中に手が回されぽんぽんと宥めるように叩かれた。
安心できる温もりに、深く息を吐く。



「まあ、英語だけじゃなくイタリア語なんかも出来れば。先は長いだろうけど」

「……頑張ります」



げ、と思ったけれど。
それしか言えないじゃないの、ここまでされてしまっては。



「機嫌は直った?」

「はい」

「じゃあ、そろそろ好きになったか」

「ふっ……何言ってるんですか」



今日はたまらなく、成瀬さんのことが、可笑しくて愛しい。
これが「好き」ならとても単純な話だけれど。



「冗談で言ってるんじゃない」



成瀬さんの声が、ちょっと拗ねたように不機嫌になった。



「だって、そんな急に言われても。そんなこと言うなら、成瀬さんはどうなんですか」


< 82 / 129 >

この作品をシェア

pagetop