副社長と愛され同居はじめます
「……俺は、言った」
「え?」
「小春が聞き流しただけで、俺は言った」
一層不貞腐れたような声に顔を上げようとしたけれど。
ぎゅっと後頭部を抑えて抱き込まれて、それは敵わなかった。
「な、成瀬さん?」
「見るな。今、大人げない顔をしてる自覚がある」
え……結構、度々大人げないので私にしてみればとても今更感があるのだが。
それよりも今気になったのは、「俺は言った」という彼の主張だ。
いつ?
私が聞き流したって……もしかしてあれ?
うどんか蕎麦かみたいな軽いノリで言われたやつ?
いやでもあれを告白と言われては、ちょっと納得がいかないというか。
そう眉を顰めていると、私を抱きしめたまま成瀬さんが溜息を吐いた。
「……好きじゃなければ、ここまで強引なことはしない。なんでこんな面倒くさいことしてると思ってるんだ」
「え、面倒くさいって、」
「小春が好きだからだ」
早口で聞こえた耳元での囁きに、かあ、と身体が熱くなった。