副社長と愛され同居はじめます
弟にしてみれば、昨日大金の仕送りに気が付いて、同時に母の味的な宅配便も届き訳も分からず私の携帯にかければ全然繋がらない。
何があったんだと心配しながら、宅配の伝票に記載されている送り主の住所が、私の住所と全く違っていることに気が付いたそうで。
そりゃ、混乱もするわ。
何があったんだと心配する弟に、とりあえず成瀬さんの肩書なんかは一旦伏せて、簡単にちょっとお金持ちの彼氏が出来たのだと説明した。
雑な説明に弟はやっぱり不審がっていたけれど、ちゃんと紹介することになるからと言えば、それならと納得してくれた。
とにかく、月々百万の仕送りは多すぎるということと、お言葉に甘えて大学での資格取得や勉強に必要な費用があればその都度成瀬さんに相談する、ということで一旦話は終結。
「ありがとう……弟にも今度、直接お礼言わせるから」
「気にしなくていい。そのうち会うことになるんだし……それより、ここはオフィスじゃない」
「え?」
「名前。さっきから『成瀬さん』に戻ってる」
パソコンデスクの椅子に座ったまま、彼がくるりと回転して私を見た。
まっすぐ手首を掴まれ、引き寄せられると、彼の足の間に立たされる形。
「えっと……柊」
「うん?」
「ありがとう。弟もこれで、お金の心配せずに勉強できる」
表情の乏しい顔が、私が素直にお礼を言うとたまらなく優しく、柔らかく緩む。
この表情を見るたびに、胸の奥が締め付けられるような感覚を抱く。
お金のある人がタイプだとも言ったし、そういう人が居れば一生貞淑を誓うとも思ってたけど、それはある意味感情ではなく理屈であって。
こんなにも心が揺らされることになるとは、思わなかった。