副社長と愛され同居はじめます
彼が戻って来たのは、一時間と少しほど経ってからだった。



「小春、飯は?」

「食べました。成瀬さんは?」

「食った」



誰と、とか何を、とか。
聞きたい情報が何もくっついてない会話。


そのまま午後からの業務に雪崩れ込む。
とても聞ける空気ではなかった。


気持ちはもやもやしたまま、そんな私に気が付かないはずはないと思うのに、彼は素知らぬフリだ。
なんだか無性に腹立たしくなってきて、ぶるんと頭を振って雑念を振り払う。


帰ったら、絶対聞き出してやる。


まだなんとも名前のつかない、恋人とも言い難いけど婚約の約束はしてる仲で一緒に住んでもいるのだから女性の影くらいは気にしてもいいはずだ。


そう意気込んでいたのに。



「悪い、先に帰って」

「え?」



夜もまた、彼は一人行動をしたのである。

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