副社長と愛され同居はじめます
「…………なんなんだろう」
気になるのに聞けない、聞かせてもらえない。
隙がない。
もうここまで来たら、過去の女性なんかではなく現在進行形なのかと思えてきてしまう。
沢さんが作って置いてくれていた今夜のおかずはハンバーグと根菜のサラダ、ブロッコリーの入ったポタージュスープ。
一人で黙々と食べるには、寂しいメニューだった。
かといって、残すのは信条に反するというか。
自分の分だけはしっかり食べて、彼の分は冷蔵庫に入れておく。
とりあえず、浮気をされていることを察しているのに旦那の分も夕食を作り、一人食事を済ませ虚しく帰りを待つ妻、という気分を体験させられた。
まだ結婚どころか婚約も曖昧だし食事は私が作ったものではないけれど。
こぽ、こぽ、と水泡の音につられて、ネオンテトラの水槽の前に立つ。
触れればひやりとして、そこから少し頭の方も冷えて来た。
結婚したら、彼は愛人を持つタイプなのだろうか。
だったら、嫌だな。
本気で好きになってしまったら、辛くて耐えられそうにない。
出来れば、夫婦仲良く暮らしたい。
そこまで考えて、ふと、気が付いた。
結局お金がないとなんだかんだと言っているけれど。
私の中には、お金を捨てて愛を選んで温かい家庭を作った両親がちゃんといる。
彼らに育ててもらった家庭の思い出が、欠片になってちゃんと私の中に居た。