縁に連るれば
「……そんなの、言われなくたって分かってるって」


分かっている。

自分が一番、分かっている。

だからこそ辛いんだ。
どうしたらいいか分からない。



「だったら、あの娘とは早々に蹴りを付けるべきです」



結論を急ぎたがるらしい。

俺にはそんな、彼女を突き放すことはできない。


……それは何故か?

彼女には帰る場所がなさそうだし、また追い剥ぎにでも遭ったら大変だから?

根底はそうだろう。


思わず、ふっと笑う。
不気味なもののように見てくる中村君の視線が痛い。

きっと睨み付けてやる。



「君に言われる筋合いはないよ」



詳しくは知らないから俺にも言えたものではないかもしれない。

それでも、中村君よりは知っているし、何よりこれは俺自身の問題だ。

体裁を守らなくてはならないのは、伊東先生に忠告されてもいるし、重々承知しているつもりだ。


なんだか無性に腹が立った。



「……失礼しました」



少し間をおいて、中村君は頭を下げた。

上辺だけなのだろうと分かるような態度だった。


そんな彼を横目に、さっさとその場を後にした。



俺も駄目だ、こんなことで乱されるようでは。

このままでは巡察にも影響が出そうだ。
それでは困る。


ドッドッと足音を響かせながら、パンパンッ――と両頬を叩く。

士気が下がるようなことを組長がしてはならないだろう、俺。


今は大事な時、だ。

職務はきちんと果たさないと、と隊の者が集まる場所へ向かった。


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