縁に連るれば
「あいつ、お前とは恋仲じゃないって言ってたぞ。違うのか?」



麺をずず、と啜るなり、彼はそんなことを言った。

なんだ、二人はいつの間にやらまともに話ができるようになっていたらしい。

そのことに驚いて、ははは、と笑う。

ちょっと不自然だったかな。



「妃依ちゃんの言う通りですよ。俺達の間には、何もない」



妙に含みを持たせて口から出てしまったことに自分でも驚いて、少しだけ後悔した。

これに土方さんが食いつかない訳がない。


無心を装ってうどんを啜る。



「平助は“そう”なりたいのか」



“そう”――恋仲に、なりたいのか。


ひたすら自問自答を繰り返しても分からなかったことだ。


今まででそういう気持ちをおなごに寄せたことがないわけではない。

ただ、これまで隊のことばかり考えていた。


場所も場所だし、時期も時期だ。

屯所内で色恋に花を咲かせる気にもならない。
そんなに無神経な人間じゃない、俺は。



「どうでしょうね。自分で自分が分からないです」



何も深いことを考えずに口にしてみれば、明らかに迷っている風な発言になってしまった。


助言が欲しい。
俺はどうすべきですか。


この状況にたかをくくっていたが、とうやらそれは見誤っていたようだ。

墓穴を掘ったような、気がした。


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