縁に連るれば
そもそも俺は、妃依ちゃんに対しては保護者的視点に立っていると自分では思っている。

彼女にどう思われているのかは、それこそ分からないが。


そう一本筋を通して彼女を見ていれば、特に何も問題はないんだ。


ただ彼女が、あの場に――屯所に居続けていいのか、というところが問題なだけであって……



「野暮は言わねえ。……だが、なるべく早急にあいつを摘まみ出せ。いてもいいとは言ったが、やはり取り巻く情勢は良くないし」



そう言っては、うどんの汁を啜る。


そうですよね、としか言いようがない。

何の反論も浮かばないのが悔しくもなく、逆に笑えてくる。


俺は何を相談するために土方さんを呼んだんだろう。



「“タダ飯食らい”でいてもらっても困るからな。『居残り』を思い出すだろ」



独りごちて笑いかけたとき、土方さんはおかしなことを言った。


「居残り」とは、落語の「居残り佐平次」のことだろう。

あれはたしか、貧乏な佐平次が品川の遊郭へ行こうと誘われて行ったものの、金がないから勘定は払えないから、代わりの者が来るまで働く、と店に居残りした噺だ。

うまく立ち回る佐平次が人気になって若い衆は困り、果ては罪人だと言うから、店から追い出される。


……いやいや、なぜここでそれを思い出すの、土方さん。


< 23 / 26 >

この作品をシェア

pagetop