縁に連るれば
どこへ行くのかと思いつつ、無言のまま大路を横切り、小さな門を潜って御前通を東へ向かうこと数分。

ちょうど突き当たりに東本願寺の塀が見える道だ。


この道は、元は方広寺にあった大仏の“前”、ということでこの名前が付いているらしい。

東は鴨川より向こうの方広寺の前から、西は西本願寺の先まで続いている、と町の人に聞いたことがある。


先を進む先生が急に道の真ん中で止まり、後ろを振り向くなり、俺と肩を並べて歩き出した。


なんだかこの静寂が不気味で仕方がない。

何を問われるのだろう、と思わず唾を飲み込んだ。



「――先日、娘を拾ってきたそうじゃないか、藤堂君。どうするつもりなんだ?」



図星をくらった。

妃依ちゃんのことが話題に上がると、どこかで思っていた自分がいたんだ。


どうも答えられず、しかし黙るわけにもいかず、聞き直すことしか思い浮かばなかった。



「どうする、とは……」


「色々あるだろう。祇園の方にやるとか、自分が娶るとか、だよ。とにかく、屯所には置いておけまい」


「しかし……」


「大方、土方君あたりが外に出すのを嫌がっているんだろう?その気持ちも分からなくはないが」



図星にさらに図星をくらう。

こんなに議論ができなかったか、と言葉に詰まる自分に嫌気が差す。

そっと、拳を握る。


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